■オイル塗料が乾かない
オイル塗装後24時間経過しても表面がベトベトしている。
表面に拭き取り残したオイルがフィルム状になって、中膿み(表面に薄い膜が張り、その下がグジュグジュと乾いていない状態)している。
原因
内部塗装:
オイル塗布の際の拭き取りがムラや拭き取り忘れ
→ 原因を誘発していることに、塗布量過多(厚塗りし過ぎ)が考えられる。
また、気温の高い作業条件の場合には、拭き取りまでの放置時間によって拭き取り作業時に粘りが生じ、拭き取りがし難くなることで拭き取りムラが発生しやすくなります。
外部塗装:
外部へのオイル塗装では、出来るだけ薄塗りで塗り伸ばして、塗りっぱなしが求められますがと、塗布量が多過ぎる場合に薄く塗り伸ばしが出来ず、乾燥不良が起きます。
乾燥不良の対処方法
オイル塗料の乾燥不良が発生したら、洗浄剤やペイントうすめ液などを布に付けごしごしと拭いて下さい。それでも取れない場合は、洗浄剤やペイントうすめ液などをベトついている部分に刷毛塗りし、直後に#240程度のサンドペーパー、ないしはスポンジ研磨材、スコッチブライトなどで研磨して下さい。研磨材に乾かないオイルがからんできますので、研磨材をこまめに換えて研磨する必要があります。
また、時間が経過してしまっている場合、オイルフィルム状態になってしまっている場合など、上記ペイントうすめ液では溶けない場合もあります。その場合は、より強い溶剤ストロンTXLシンナー、さらにはアセトンなども使用することも想定されます。最終的には塗膜剥離剤を使用しなければならないケースも発生します。有機溶剤中毒、火災等に十分注意の上お使いください。 |
今後の対策
内部塗装:
なるべく薄塗りを心がける。ウエスでの拭き取りをキッチリ行う。
特に、2回目のオイル塗料塗布の際には1回目で吸い込みが抑えられている為、1回目ほど吸い込みません。
こうした状態で厚塗りをしてしまうと表面に漂うオイルが多すぎる為、どうしても拭き取りが甘くなります。
こうしたことが原因で、オイルのべたつき乾燥不良が発生するケースが多く見受けられます。
2回目ほど薄塗りで、キッチリとした拭き取りをすることが求められます。
また、メンテナンスで再塗装をする場合にも同様の注意が必要です。
気温の高い作業条件下で拭き取りが重かったり粘ったりする場合には、拭き取りまでの時間を短縮し手早く拭き取り作業をして下さい。
標準的な拭き取り時間が20分後となっている場合でも、高温時では5分程度の放置時間で拭き取りをしないと粘りが発生して拭き取り辛くなることがありますので、適宜判断して放置時間を短縮するようにしてください。
また、高温時に広い面積を作業される場合は、そのオイルの専用薄め液で5〜10%薄めて(又は増量して)作業することによって拭き取りが容易になります。(詳しくはメーカーの仕様に順ずる)
外部塗装:
外部への塗装では、出来る限り薄塗りで塗りっぱなしを心がける。その為には塗料を一度にタップリと被塗物の上に乗せない事が求められます。
■カシュー塗料が乾かない
表面にシワ(チジミ)を伴って、シワの下が乾いてない状態。
原因
一度に厚塗りし過ぎ。塗布粘度が高過ぎる。
乾燥不良の対処方法
カシュー塗料の乾燥不良の塗膜は、ヘラなどで取り除き、シンナーで拭き取ってから再塗装をする必要があります。 |
今後の対策
適量カシューシンナーで希釈し、一度の厚塗りを避ける。
この二つの事例ですが、塗料はまったく違っても、同じ原因で起きています。塗膜が過多になって、表面に膜が出来、空気を遮断するので内側がさらに乾燥が遅れ、最終的に乾かなくなります。どちらも酸化重合型塗料で、塗膜の表面より反応が起こるタイプである塗料の宿命です。 |
■湿度の高い環境でオイル塗料、又はカシュー塗料を塗ったら非常に乾燥が遅い。
原因
オイル塗料などは、植物樹脂の酸化重合反応を促進する為、ドライヤーと呼ばれる金属触媒が配合されています。このドライヤーが湿気の影響を受け、働きが弱まる事によって、オイル樹脂の酸化反応自体も遅くなります。また、素地湿気を含んでいる場合なども同様の現象が起きます。カシュー塗料でも同じ原因で乾燥が遅延します。
対策
塗装時、乾燥時の雰囲気湿度を低くする。
素地を加温して含水率を低下させる。(プレヒート)
■湿度の高い環境で水性塗料又は漆喰を塗ったが非常に乾燥が遅い。
原因
水性塗料、漆喰いずれも水を媒体にした塗料の為、水分が揮発しないと乾燥、反応が開始しない。高湿度下では、水分の揮発が遅れることが原因です。
漆喰では、特に低温で湿度が高い場合に乾燥の遅れが顕著になります。
対策
水性塗料では加温して雰囲気湿度を下げるのが効果的です。
漆喰では、あまり温度を上げると乾燥が速すぎて作業がし難くなりますので、風を通すのが効果があります。外部漆喰塗りでは雨天を避ける。
上記のように水分(湿気)は塗装に様々な影響を与えます。漆のように湿気が乾燥するのに必要な塗料もありますが、似た仕上がりのカシュー塗料は逆に湿気により乾燥を阻害されます。
また、必要以上の湿気は、上記以外の塗料にも悪影響を与え、硬化不良や白化(ブラッシング)、密着不良等トラブルの原因となりますので、適切な湿度管理(一般的には相対湿度75%以下が好ましい)が求められます。 |
■ウレタン塗料(又は油性塗料)で仕上げたものからシンナーの臭いがなかなか抜けない。
原因
塗装時の塗布量、配合、工程間の時間、気温、除湿、シンナーの種類、
乾燥時の気温、除湿、換気、加温の状況、強制(又は常温)乾燥時間、など複雑な因子が重なって起こる現象です。
表面乾燥が生じている状態で塗膜中に有機溶剤が閉じ込められ、それが発散するのに時間が掛かっている状態が考えられます。
塗装時悪条件・・・塗布量過多、配合上シンナーが少なく塗装粘度が高い、工程間の時間が短い、塗装時の気温が低い、湿気がある、温度に応じてより揮発の遅い溶剤を使用、等と言った塗装時の悪条件。
乾燥時悪条件・・・乾燥室温が低い、換気が不十分、湿気がある、加温なし、乾燥時間が短い等と言った乾燥時の悪条件。
これらの悪条件が幾つか重なると乾燥不良とともに、表面上は乾いたように見えても内部では揮散されずに残ってしまった有機溶剤がトラブルの原因となります。
対策
塗装時、乾燥時の悪条件を重ねない事、が必須です。
特に低温時には注意が必要となります。
薄塗りが基本です。厚い塗膜を付けたい時は、薄く塗り重ねて、1回1回をキチンと乾燥させながら塗り重ねを行うことが肝要です。
また、表面乾燥がされてしまったものに関しても強制乾燥・・・加温をして同時に換気の手段を取る、ことが効果的です。
加温の方法は、有機溶剤の引火災害に充分注意をし、火の見えない加温機の使用をお勧めします。「湯煎」といい、お湯の中に充分乾燥した塗装物を入れて暖める、のも一案です。
こもってしまった溶剤を抜けさせるには、時には長時間(1〜2週間以上)の掛かる場合があること、ご認識下さい、。 |